浅井康宏
宇宙を手に入れた。
果てなく続く漆黒の闇のなかから降り注ぐかのような星々の煌めき。
その星々の一つ一つは、豊かな色彩を湛え、絶えることのない煌めきを放っている。
浅井の螺鈿の作品を手にした瞬間、そう思う。
吸い込まれそうな漆黒の宇宙から届けられる光は、研ぎ澄まされた浅井の技が放つ表現である。
それらは何光年もの時空を超えて今現在のわたしたちを照らす星たちの光と同じように、過去から脈々と受け渡されてきた、漆芸の技の束、さんざめく光でもある。
同時に、貝片は、螺鈿となることで、それぞれに異なる生命の輝きを永遠のものとして、漆の艶やかな質感のなかに留めていく。
浅井は言う。自身が培ってきた技は、長く続いた漆芸の歴史に足跡を残した先人たちからの「借り物」だと。「借り物」を十全に生かすために、自身の肉体をそれに添わせ、委ね、時代性、自身の感性を表現に乗せて世に送り出す。
「借り物」はいずれ、返さなければならない。自身を通過させ、未来に受け渡していかなければならない。だから、それまでの「借り物」。
これと決めたデザインモチーフやテーマを持たない。
自己の表現の手段として漆があるのではなく、漆の美を世界に、未来に届けるために自身が存在する。
漆を木から育て、道具をつくる。素材を極め、蒔絵螺鈿の技を磨き、ふさわしい表現を選びとる。
そして、漆がもっとも輝くその瞬間を手繰りよせ、永遠へとつなぎとめる。
すべては漆の美しさを、少しでも多くの人々に手渡すため。
しかし、自己を消し去るかに思えるその行為の中にも、確かなものが滲み出している。
それは、浅井の作品に通底する繊細さと優美さ、華やかさとはかなさを持ち合わせた、浅井ならではの絶妙なニュアンスである。
才能を認め伸ばしてくれた高校時代の漆芸の恩師、杣田細工との出会い。いくつものターニングポイントのすべてが浅井を漆芸家へと誘ってきた。
そうして今、浅井は日本文化の激流のなかに立つ。
自身の立ち位置、なすべきことを見渡す。
意図を超えたところに、これまでとは違う、しかし確かな漆芸の景色が広がっている。
B-OWND
宇宙を手に入れた。
果てなく続く漆黒の闇のなかから降り注ぐかのような星々の煌めき。
その星々の一つ一つは、豊かな色彩を湛え、絶えることのない煌めきを放っている。
浅井の螺鈿の作品を手にした瞬間、そう思う。
吸い込まれそうな漆黒の宇宙から届けられる光は、研ぎ澄まされた浅井の技が放つ表現である。
それらは何光年もの時空を超えて今現在のわたしたちを照らす星たちの光と同じように、過去から脈々と受け渡されてきた、漆芸の技の束、さんざめく光でもある。
同時に、貝片は、螺鈿となることで、それぞれに異なる生命の輝きを永遠のものとして、漆の艶やかな質感のなかに留めていく。
浅井は言う。自身が培ってきた技は、長く続いた漆芸の歴史に足跡を残した先人たちからの「借り物」だと。「借り物」を十全に生かすために、自身の肉体をそれに添わせ、委ね、時代性、自身の感性を表現に乗せて世に送り出す。
「借り物」はいずれ、返さなければならない。自身を通過させ、未来に受け渡していかなければならない。だから、それまでの「借り物」。
これと決めたデザインモチーフやテーマを持たない。
自己の表現の手段として漆があるのではなく、漆の美を世界に、未来に届けるために自身が存在する。
漆を木から育て、道具をつくる。素材を極め、蒔絵螺鈿の技を磨き、ふさわしい表現を選びとる。
そして、漆がもっとも輝くその瞬間を手繰りよせ、永遠へとつなぎとめる。
すべては漆の美しさを、少しでも多くの人々に手渡すため。
しかし、自己を消し去るかに思えるその行為の中にも、確かなものが滲み出している。
それは、浅井の作品に通底する繊細さと優美さ、華やかさとはかなさを持ち合わせた、浅井ならではの絶妙なニュアンスである。
才能を認め伸ばしてくれた高校時代の漆芸の恩師、杣田細工との出会い。いくつものターニングポイントのすべてが浅井を漆芸家へと誘ってきた。
そうして今、浅井は日本文化の激流のなかに立つ。
自身の立ち位置、なすべきことを見渡す。
意図を超えたところに、これまでとは違う、しかし確かな漆芸の景色が広がっている。
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