市川透
熱い血が流れるような赤。スタイリッシュでメタリックな黒や金銀の光彩。その圧倒的な存在感から響いてくるのは、さながら〝自由への咆哮〟である。市川透は、備前焼をこれまで囚われてきた概念から、強烈な躍動美をもって、現代の社会と暮らしへ解放してきた。
不自由さというものを幼い頃から意識していたという市川。
「とにかく僕は自由になりたかった。生活環境や社会の成り立ちなど社会から受ける影響にものすごく不自由さを感じる状況下にあって、常に自由を求めていた」その欲求が、形式や伝統を固くなに守ろうとする作風とは決別した、誰も挑戦したことのない制作手法や表現に繋がっているのだろう。2度目の個展のテーマとして掲げた「泡沫(うたかた)」という言葉は、水面に浮かぶ泡のように、自身の作品もまた留まることなく変化し続けていくという、自由への決意表明だった。
鮮烈な赤が印象的な代表作シリーズは、「葉隠」と銘打たれている。
かの山本常朝の著・『葉隠』に記された、あまりにも有名な「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という一説。必ず向きあわなければならない「死」というものを意識し、覚悟することで、人は打算ではない高潔な「生」を生きることができる。朝に夕に、あらためて死に、またあらためて死ぬという覚悟によってのみ「武道に自由を得」と、常朝は綴っている。若いときから常に生きるか死ぬかの狭間をさまよっていたと語る市川もまた、生と死の緊張感を見据えることで、なにものにも束縛されない自由な魂を獲得してきたのだろう。
同時に、市川のもつ自由は、独りよがりな放縦とは違う。
「木は燃えて炎となり、燃え盛った炎は灰となり、灰となったものは土になり、土に還っていく。そういう循環がある。そういった循環の中に我々は生きている。宇宙の働きというか宇宙の真理があって、僕はそれに従っている。ある面、社会性に対しては反発していく精神はもちつつも、実は宇宙の真理に従っているという風に思っている」市川は、東洋古来の五行(木・火・土・金・水)の相関と循環のなかに、自身の陶芸の制作工程とも通じ合うインスピレーションを得た。宇宙の大いなる営みに謙虚に耳を澄まし、大いなるものに身を従えることで、地上の些末な旧弊に囚われない自在さを手にしているのである。
外にあるものは、既に内に存在している。
自由であることの心地よさと力強さ。生きているということの熱と気高さが、私たちの前に強烈なインパクトをもって現れる。
B-OWND
熱い血が流れるような赤。スタイリッシュでメタリックな黒や金銀の光彩。その圧倒的な存在感から響いてくるのは、さながら〝自由への咆哮〟である。市川透は、備前焼をこれまで囚われてきた概念から、強烈な躍動美をもって、現代の社会と暮らしへ解放してきた。
不自由さというものを幼い頃から意識していたという市川。
「とにかく僕は自由になりたかった。生活環境や社会の成り立ちなど社会から受ける影響にものすごく不自由さを感じる状況下にあって、常に自由を求めていた」その欲求が、形式や伝統を固くなに守ろうとする作風とは決別した、誰も挑戦したことのない制作手法や表現に繋がっているのだろう。2度目の個展のテーマとして掲げた「泡沫(うたかた)」という言葉は、水面に浮かぶ泡のように、自身の作品もまた留まることなく変化し続けていくという、自由への決意表明だった。
鮮烈な赤が印象的な代表作シリーズは、「葉隠」と銘打たれている。
かの山本常朝の著・『葉隠』に記された、あまりにも有名な「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という一説。必ず向きあわなければならない「死」というものを意識し、覚悟することで、人は打算ではない高潔な「生」を生きることができる。朝に夕に、あらためて死に、またあらためて死ぬという覚悟によってのみ「武道に自由を得」と、常朝は綴っている。若いときから常に生きるか死ぬかの狭間をさまよっていたと語る市川もまた、生と死の緊張感を見据えることで、なにものにも束縛されない自由な魂を獲得してきたのだろう。
同時に、市川のもつ自由は、独りよがりな放縦とは違う。
「木は燃えて炎となり、燃え盛った炎は灰となり、灰となったものは土になり、土に還っていく。そういう循環がある。そういった循環の中に我々は生きている。宇宙の働きというか宇宙の真理があって、僕はそれに従っている。ある面、社会性に対しては反発していく精神はもちつつも、実は宇宙の真理に従っているという風に思っている」市川は、東洋古来の五行(木・火・土・金・水)の相関と循環のなかに、自身の陶芸の制作工程とも通じ合うインスピレーションを得た。宇宙の大いなる営みに謙虚に耳を澄まし、大いなるものに身を従えることで、地上の些末な旧弊に囚われない自在さを手にしているのである。
外にあるものは、既に内に存在している。
自由であることの心地よさと力強さ。生きているということの熱と気高さが、私たちの前に強烈なインパクトをもって現れる。
B-OWND
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